伊勢新聞

2024年11月3日(日)

▼津市の上下水道事業局職員が業者に工事を偽装させ委託料をだまし取らせたとする問題で、前葉泰幸市長は市の発表から一日置いた定例記者会見で「重く責任を感じている」

▼「重く責任」の程度には個人差もあろうが、特定自治会長の事件で市の検証委から「組織の長としての責任」を指摘され、公正公平な市政の確保に関する条例を制定して内部統制室を設けたが、翌年に津ボートレースのテレビ広告を巡る収賄事件で「組織として統制ができていなかったことは、組織のトップとして反省する」と語り、一年を経て詐欺容疑の職員を告発するに至った。責任の痛感は計り知れないものがあろう

▼CM収賄事件が職員側から要求する「常習的犯行」で検察から「悪質」と断罪されたが、今回の架空水道工事問題も構図は同じ。かつて県の裏金作りの三本柱とされた架空工事でもおなじみで、公務員が出入りの“御用業者”を使って公金を搾取させ、キックバックする手口だ。旧態依然の“悪行”が脈々と受け継がれているように見えなくはない

▼前葉市長は「法令順守を徹底している中で申し訳ない」「公平、公正な市政を幹部らにも徹底した」。原因については担当職員に任せすぎた、組織のチェック機能が不十分だった、こと。特定自治会長事件のデジャヴ(既視感)を見る思いがする

▼国土交通省の上下水道施設の緊急点検で耐震化は15%。自治体の予算不足に対し財政支援を概算要求に盛り込んだそうだが、津市職員にとっては国益なくて市益あり、市益なくて私益あり、か。