伊勢新聞

2024年11月2日(土)

▼先の衆議院選の党首会見で、国民民主党の玉木雄一郎代表が「尊厳死の法制化」を公約として口にしたことには、正直驚かされた。これまでこの問題を正面から提起した政治家はいなかったからだ。しかも、その背景にある終末期治療に関しては「見直すべき」との認識を示した

▼しかし、その後ネットでは、「医療費を抑えるための尊厳死?」「命の選別をしろということ?」などと、否定的な意見が相次いだ。尊厳死が何か? また、いかに日本の終末期治療、具体的には人工呼吸、透析、胃ろうなどが単に生かし続けるだけの延命治療かを知らない若い人が多すぎる

▼日本の濃厚な終末期治療は、ある意味で生命に対する冒瀆(ぼうとく)だ。これにより、ただ死を待つだけの「寝たきり老人」が数百万人も存在する。その中には、はっきりと「死なせて欲しい」と訴える人もいる。しかし、その希望を医師がかなえたら場合によっては同意殺人罪になる

▼玉木氏の提起を単に「医療費削減のため」と捉えると、反発、誤解を生む。世界には安楽死を認めている国もある。尊厳死は、自己決定権という権利の問題。その法制化は切実かつ緊急の政治課題である。