伊勢新聞

2024年10月28日(月)

▼逮捕された時、「同意があると思っていた」と語っていたらしい。初公判への手続きが進む中で起訴内容を認める方針に転じ、初公判の罪状認否では「被害者に対し深刻な被害を与えたことを謝罪したい」

▼酒に酔った部下の女性に性的暴行を加えたとして、準強制性交罪に問われた元大阪地検検事正の弁護士である。同罪で逮捕・起訴された被告の軌跡は、名もなき企業の役職者でも、法の番人である大阪地検の元トップでも、そう変わりはないようである

▼検察が冒頭陳述で明らかにした内容は、むしろもの悲しい。その当初こそ「これでおまえも俺の女だ」と強気の発言を繰り返したというが、日が経つにつれ謝罪の言葉を述べ「時効が来るまで食事をごちそうする」「公にしたら死ぬ」などと弱気に転じ、退官が決まってからは「表沙汰になれば大阪地検が立ちゆかなくなる」など、脅しとも取れる言葉も

▼どんな顔をして言ったのかは分からないが、心の中では脂汗を浮かべていたのではないか。千々に乱れる心から発せられる場当たり的言葉が、相手の心に響かぬのは間違いない。退官後に弁護士登録し、法の世界で何食わぬ顔で活動し出したというのも検事経験者としてはいかがなものか。不誠実な言動と受け取られたようなのはやむを得ない

▼女性の悪評を流したり、捜査情報を漏えいしたとして副検事も告訴されている。大阪地検が、女性の訴えを真正面から取り上げようとはせず、むしろもみ消そうとした気配さえある。組織というものはいずこも同じということか。