伊勢新聞

2024年10月21日(月)

▼三重県人権・同和教育研究大会全体会で、土地取引を巡り小学校教諭が知事から部落差別解消条例に基づく「説示」を受け、県教委が懲戒処分にした問題で、主催者である県人権教育研究協議会の川島三由紀会長が「県内に衝撃を与えた。言語道断」と厳しく断罪した

▼「これまでの取り組みが差別を解消することにつながっていなかったのではないか」と自問自答し、来賓の野呂幸利副知事も「教職員の部落差別は積み上げてきた取り組みをなかったことにしかねない」

▼令和4年に部落差別解消条例が制定されて初の「説示」であることも強調されが、土地を巡る教職員の部落差別問題は24年前にも発生していることは言及されなかった。土地取引・賃貸契約に関しての差別事例は頻発し、県は宅地建物取引業界を調査し、指導を重ねて成果を上げてきた中での今回の事案であることも、運動団体が指摘しただけだった

▼県や県教育委員会では、こうした過去の教訓が共有されているかは疑わしい。大会でも、世代交代が進む中で人権教育が大切にしてきた実践や成果を次代に引き継ぐことが「喫緊の課題」とされた。断絶があることを物語っている

▼野呂副知事は「全ての個別学校で研修を実施し、固い決意で臨んでいる」と述べた。福永和伸県教育長も、処分とともに再発防止に向け、動画やリーフレットを使った研修を全ての公立学校で実施することを明らかにしている。一から再スタートということか

▼大会で来賓として出席した福永教育長はあいさつに立つことはなかった。