伊勢新聞

2024年10月20日(日)

▼同性婚の法制化に向けた議論促進を求める意見書案を三重県議会が否決した。賛成19人に対し反対が23人、退席が4人だった

▼退席者がもし賛成だったら、と仮定の話をするのはやぼというものだろう。大げさに言えば、議員の賛否は議席を懸けて決めている。退席という選択は、信条や選挙区事情などのほか、理由を明示できないことも理由としてあるに違いない

▼県は令和3年、性的指向や性自認を第三者に暴露する「アウティング」を禁止する条例を都道府県レベルでは初めて制定し「性の多様性を認め合う社会の実現」へ積極的な県とされているが、パートナーシップ制度を条例に含むことを議会で明言して1カ月後に撤回するなど、成立までに曲折があった

▼賛否両論ある問題を条例に盛り込むのは県民を分断することにつながるなどの反論が自民党から出たともいわれる。「アウティング」禁止がぎりぎりの妥協点だったと見られる。それから3年。パートナーシップ制度の延長線にある同性婚の賛否は、議会に限っては真っ二つのままといえる

▼県の教職員らが参加する県人権・同和教育研究大会が19日、松阪市・多気郡4市町で開催した。大会委員長の竹上真人松阪市長は依然として人権環境の厳しさを指摘し、特に性の多様性、SNS(交流サイト)による差別事象などの解決が現在の人権課題の急務としていた

▼人権の主題は数年前の障害者差別から変わりつつあるということだろう。賛否がっぷり四つから一方に雪崩を打つ時期が近づいているのかもしれない。