「弓道が人生を豊かに」 全日本女子弓道準Vの三重県連盟副会長の伊藤紀美子さん

【伊藤紀美子さん】

三重県弓道連盟副会長の伊藤紀美子さん(63)=津市=が、9月に伊勢市の神宮弓道場で行われた第57回皇后盃全日本女子弓道選手権で自己最高の準優勝を果たした。10代から弓道を続け、全日本女子選手権で3位2度、4位1度。昨年5月には女性として県初の八段(教士)審査に合格した三重を代表する女性弓道家は「弓道が人生を豊かにしてくれた。できるだけ多くの人が長く弓道を続けてくれたら」と願う。

愛知県出身。中学で出合った弓道の「的に当たる音」に惹かれて練習にのめり込み、豊田西高時代、愛知県代表として青森国体に出場した。練習を通じて知り合った徹さんと結婚後、徹さんの転勤で各地を転居しながら弓道との関わりを持ち続け、津市に住所を定めた約20年前から市内の三重武道館で練習。全日本女子選手権には22回出場し、2005年に三重県勢初の3位入賞を果たした。

【三重武道館で夫・徹さんと一緒にけいこに励む伊藤紀美子さん=津市北河路町で】

指導者としても実績を重ね、07年の秋田国体競技別総合優勝などに貢献している。全日本弓道連盟の定める錬士六段に合格後は、弓道の指導に必要な教養や実力が試される教士の段位取得に挑戦し、昨年、2度の実技と論文提出を経て教士八段の審査に合格。現在県内で活動する有段者の中で、範士八段の宮内道廣・県弓道連盟相談役に次ぐ高段者となった。

「弓道の良さは的を通して自分と向き合えるところ。弓道を通して社会とのつながりを求めていた時期もあった」。育児や介護に忙殺され、満足に弓が引けない時期も「年1回程度」道場に立った。県弓道連盟の役職を務めたことをきっかけに、津市スポーツ協会や県スポーツ協会の役職も任されて「人とのつながりが、うんと広がった」。

一番大きいのが夫との出会い。最初は1人で通った練習だが、徹さんが完全に仕事から一線を引いた約10年前から夫婦で通うようになり「効率が良くなった」。八段取得後、一時的に思うように弓が引けなくなり、当初挑戦をためらった今年の全日本女子選手権も、徹さんの後押しで週5日の猛練習の末、過去最高の全国2位に輝いた。「一番身近で変化に気づいてくれる」夫への感謝を惜しまず「これからも弓道に関わっていきたい」と話す。