伊勢新聞

2024年10月13日(日)

▼津市の行政放送で同市安濃町にツキノワグマの出没情報を流し、外出を控えるように呼びかけていた。安濃川河川敷で目撃されたという。県が「クマアラート」(注意報)を発表したのは8日。安濃地域の河川敷と芸濃地域の田んぼでそれぞれ目撃情報があったというが、放送での警戒呼びかけで、緊張感は高まる

▼安濃川河川敷といえば、鹿が数頭、川を横切るのを目撃したことがある。2頭が川周辺の農道を歩いている姿も。ツキノワグマが出没しても不思議ではない。獣道があるのか。鹿を追ってきたのかも知れない。芸濃地域の目撃情報も、具体的には安濃川上流といううわさだ

▼近年急速に生息域を広げているツキノワグマの扱いは複雑だ。一見勝之知事は8月、「保護の対象」から「駆除の対象」に改めるよう環境省に申し入れるとしたが、結果はどうなったか。鳥獣保護管理法は保護のため個体数の管理などを目的とした計画的な捕獲は禁じているが、今年の出没情報は例年をはるかに上回る

▼先の県議会では捕獲した後に放すクマにGPS(衛星利用測位システム)を装着できないかの質問が出ていて県当局は「今のところ考えていない」と回答した。が、平成27年にいなべ市で誤って捕獲したクマはGPSを装着して滋賀県内に無断で放ち、直後に同県で高齢女性が襲われて重傷を負う事故が発生し、同県から猛抗議を受けている

▼建前と実際は大きく違うということだろう。県は環境省に「早急な対応が必要」と申し入れたそうだが、そのこと自体に異存はない。