伊勢新聞社の政経懇話会が10日、三重県津市新町のプラザ洞津であり、ジャーナリストで思想史家の会田弘継氏が「米大統領選と日本『それでもなぜ、トランプは支持される』」と題し講演した。会田氏は11月に実施の米大統領選について、「トランプ氏が勝とうがハリス氏が勝とうが、結局は『トランプ型政治』が続く」と語った。
2016年の米大統領選で、共和党のトランプ前大統領が当選したことについて「革命的な政治異変が起きた」と強調。
背景に、米国の産業構造の転換を指摘。70年代以降、IT(情報技術)や金融業をはじめとしたサービス業が興隆する一方、製造業が弱体化し、それが格差社会につながったとした。
2007―08年にかけて起きたリーマン・ショックも格差拡大に拍車をかけたとする。中間層や低所得層が家を失うなどして資産の7割が減少した一方で、上位10%の超富裕層は逆に資産を3割増やしたとした。
共和党と民主党の支持層の変化も指摘。ITや金融が多い東西海岸部から支持を受ける民主党と、衰退する製造業の多い地域から支持を受ける共和党との図式になっていると強調。「民主党は労働者の味方、共和党は金持ちの政党とのイメージがあるかもしれないが、まったく逆だ」と述べた。
その上で、16年のトランプ大統領の誕生について「絶望している人々がトランプを選ぶ。トランプは原因ではなく結果だ」と述べ、「トランプが民主主義を壊したのではなく、民主主義が壊れたからトランプが生まれた」と強調した。
この流れは今回の大統領選で、トランプ氏が勝とうが民主党のハリス副大統領が勝とうが変わらないと指摘。
移民への強硬策や対中関税の強化など、すでにバイデン民主党政権もトランプ政権時代の流れをくむ政治を続けているとし、「トランプ型政治はさらに続いていく」と語った。
会田氏は埼玉県生まれ。東京外国大卒業後、1976年に共同通信社に入社。ワシントン支局長、論説委員長などを経て現在、客員論説委員。米オンライン誌「アメリカン・パーパス」編集委員など兼任。