伊勢新聞

2024年10月8日(火)

▼大学4年生で卒業見込み書が出ず、就活はできなかった。卒業後、新聞募集に応募して社会人1年生になったから、いわゆる一流企業には縁がなかった。2年後、その会社にリクルートスーツを着た有名国立大学の新卒が入社し、初出勤に母親同伴で現れた

▼就職氷河期などのずっと前の話だが、それでも母親同伴は珍しい。能力は優秀と言えず、大学が雲の上の存在だったので、ふた言目には「どこの大学出だ」とからかったのは若気の至りだった。同業他社で、よく笑いものにされている社員がいた。「出社第1日目が母親同伴だったんだ」と友人が言っていた

▼今は就職も売り手市場で、企業が入社式に親を招く時代らしい。企業側は就職辞退者を防ぐため、大学側も就職実績を上げる思惑があるという。新卒者は、別の意味で早くも世間の荒波の洗礼を受けることになる

▼企業はまた、カスタマーハラスメント防止の指針を相次ぎ公表している。社員を守る姿勢を外部に示すためらしい。行政も、東京都がカスハラ防止条例を成立させた。全国初だが、県が罰則も視野に追随する構えなのは周知の通り。理不尽な県民の苦情から職員を守るということだ

▼一昔前は、県民の問い合わせに対する職員の対応が木で鼻をくくったようで不誠実だと問題になった。一県民として問い合わせ、のち社名を名乗った時との手のひらを返したような対応も体験した

▼電話の応対などを研修させられたと聞くが、人材争奪時代となり何もかも変わったが、変わらぬのは「平生往生」ということか。