伊勢新聞

2024年10月7日(月)

▼来年度の県の行政展開方針案について、三谷哲央議員が「きめ細かに書かれているが、県民に理解してもらうのは難しい。目指すことを端的に」と注文した。端的に言えば、行政マンの書いた方針ということだろう。精緻を極めているようだが、魅力がない

▼かつて北川県政から野呂県政に変わり「いや、楽になった」と県幹部が言った。生活者起点を柱に、県庁ができることを県民に提供することをサービスとは言わない、県民が求めることを提供してこそサービスだ、などと言って職員に発想の転換を強いた北川県政から野呂県政になり、職員は解放された気分になったに違いない

▼鈴木県政が、新しいもの好きだったことはよく知られる。既存の施策から派生させた新事業は認めなかった。一工夫、新味がなければ取り上げることはなかった。前例踏襲が基本の職員にとって、対応はなかなか難しかったのではないか

▼一見県政の施策立案に“新しさ”は格別求められていないようだ。来年度当初予算の編成に向けた「調製方針」は、要求額を前年度の90%以内とするも、子育て支援や防災、観光振興などは要求額の上限を定めていない。既存の方針を“深掘り”していくという職員得意のリポートを重ねれば事足りる

▼注力する取り組みが、前年度の5項目から7項目へ。が、本紙は「内容に大きな変化はない」と評したことがそのことを物語る。職員がのびのびと起案している情景が浮かぶ。ご同慶の至りだが、それで目前に迫っている課題が乗り切れるかは別の問題である。