伊勢新聞

2024年10月6日(日)

▼各医療機関から請求される診療報酬を審査する社会保険診療報酬支払基金を見学したことがある。コンピューター化され、不正が入り込む余地などないように見えたが、県立総合医療センターは明らかになっただけで平成26年から約6億円超の不適切請求を繰り返していた

▼四日市公害患者の専門医療機関として知られ、平成6年に移転改築して現病院名に。県立病院改革で24年から地方独立行政法人となった。いわば県を代表する医療機関が「診療報酬の知識や制度の理解が不足」(小倉康彦事務局長)で術式の不正請求が112件、リハビリでは20万件あったというのはあきれる

▼保険適用外の腹腔鏡手術を保険対象の開腹手術と装って請求したというのは、前者が高度な技術・経験を必要とするだけに、知識や制度の理解不足とはにわかに信じがたい。リハビリなどでの保険適用外の請求は、むしろ知識や制度に精通していなければできないことではないのか

▼かつて県立4病院の赤字問題は県議会の開会のたびに問題となった。“県立病院の役目は終わった”などのお定まりの理由で野呂県政で見直しが始まり、志摩病院の運営が民間委託、総合医療センターが地方独立行政法人となった

▼職員の大幅減となり、次の鈴木英敬知事の職員削減の公約を助けることになったが、県立病院の運営は以来、県民の目から遠ざかってきた。不正請求が明らかになった翌日の県議会でも、特に問題にされた様子はない。不正がまかり通るようになったと言ったら言い過ぎだろうか。