人口減対策「サボっていた可能性」 知事の発言、真意は 三重県議会一般質問

【右から中森博文議員、中瀬信之議員、中嶋年規議員、日沖正信議員】

三重県議会は1日、中森博文(自民党、6期、名張市選出)、中瀬信之(新政みえ、2期、度会郡)、中嶋年規(自民党、6期、志摩市)、日沖正信(新政みえ、7期、いなべ市・員弁郡)の4議員が一般質問した。「県が(人口減対策を)サボっていた可能性がある」と述べるなど、過去の対応を指摘する一見勝之知事の発言に対し、中嶋議員は「県行政の怠慢で課題解決が進んでいないと思われる」と指摘。一見知事は「できていなかった部分を認識して前に進むことが大事」などと説明した。

首相に期待することは

中森 博文議員(自民党)
石破茂首相と新内閣に期待することを尋ねた。一見知事は東京一極集中の是正や地方創生、産業振興などへの期待を示したほか、石破氏が掲げる「防災省」の設立にも賛意を示した。

【三重の塔】
中森議員 沖縄県にある「三重の塔」で県遺族会が開いてきた慰霊式は令和4年度から県の主催となった。敷地内の老朽化を受け、県は改修に向けた実施設計を進めている。終戦80年の思いと改修の概要は。

枡屋子ども・福祉局長 三重の塔は来年で設置から60年を迎える。十分なスペースの確保やバリアフリー化を図る大規模な整備をしたい。来年11月の慰霊式に間に合うよう、来年1月初旬をめどに設計を終えて速やかに着工したい。

【新内閣】
中森議員 石破さんが先の総裁選で自民党新総裁に就任した。心からお喜びを申し上げたい。きょうの臨時国会で首相の指名選挙があり、石破さんが102代首相になる。石破内閣に何を期待するか。知事の所見は。

知事 海上保安庁で勤務していたとき、石破防衛庁長官(当時)と話をした。最も期待することは、東京一極集中の是正や地方創生。人口減対策への期待も大きい。災害を担当する役所も本当に必要。産業の振興も力強く進めてもらいたい。

食料自給率、県の認識は

中瀬 信之議員(新政みえ)
食料自給率の低さに加えて相次ぐ災害による作物の減少を危惧し、知事の認識を尋ねた。一見知事は「自給率を上げるには、生産の効率化や販路の拡大が何よりも重要」との認識を示した。

【自給率】
中瀬議員 食料自給率が低い日本にとって、自然災害による作物の減少は脅威。県議会の食料自給総合対策調査特別委員会は3月、自給率の向上や地産地消の推進、担い手の確保などを県に提言した。知事の姿勢は。

知事 食料自給率を上げるには、効率的な生産や販路の拡大が何よりも重要。集約化やスマート化、地産地消、輸出拡大の必要がある。たびたび県庁の食堂で県産品を食べて地産地消を呼びかけたこともあった。来年度の取り組みも検討する。

【国スポ】
中瀬議員 知事は就任1年目に三重とこわか国体・とこわか大会(全国障害者スポーツ大会)の中止を決断したが、令和17年の開催で内々定を受けた。大会の在り方を見直すよう求める声もあるが、知事の思いは。

知事 パリ五輪とパラリンピックでは県勢に良い成績を上げてもらい、希望につながった。国民スポーツ大会に参加する選手は当然のこと、多くの県民に競技を見てもらえるようにしたい。市町や県スポーツ協会と調整して準備を進めたい。

物価高騰などの対策を

中嶋 年規議員(自民党)
9月補正予算の編成を見送った県当局に「物価高騰などへの対策を講じるべきではなかったか」と指摘。総務部は国からの追加交付が判明次第、直ちに補正予算を編成する考えを示した。

【発言】
中嶋議員 知事は人口減対策や人材確保に向けた懇話会で「今までの行政がサボっていた可能性もある」などと述べた。まるで怠慢のツケが課題をもたらしたという憶測を呼ぶ表現とも捉えられかねない。真意は。

知事 残念ながら人口が減っているのは現実。私の在任中も含め、手を付けていなかった部分もある。過去の対応が全て正しかったのか。全て間違っていたわけでもないと思う。できていなかった部分をしっかり認識して前に進むことが大事。

【補正予算】
中嶋議員 県は9月補正予算を提案しなかったが、全国では40都道府県が編成する。当初予算に盛り込まれた物価高騰対策だけで十分なのか。補正予算で対策を講じるべきではなかったか。速やかな経済対策を。

後田総務部長 一部の都道府県は交付金の残余を補正で予算化したが、県は早期の執行に努めて昨年度中に全て予算化した。特に重要な経済対策は本年度も切れ目なく実施している。追加交付の詳細が判明次第、直ちに対応する。

HP「戦争資料館」更新を

日沖 正信議員(新政みえ)
県がホームページ(HP)に設けている「戦争資料館」を約15年にわたって更新していないと指摘し、内容の充実を求めた。子ども・福祉部は戦後80年を機に更新する考えを示した。

【県内就職】
日沖議員 県の転出超過は約8割が若者で、流出に歯止めがかかっていない。若者の県内就職を促進するには、県内企業の魅力を知ってもらう必要がある。若者の価値観やニーズ、環境の変化を捉えて対応すべき。

松下雇用経済部長 近年は良好な職場環境や休みやすさなどが企業を選ぶ材料。魅力ある企業を体感できる機会の提供や保護者への働きかけなどに取り組んでいる。若者のニーズや環境変化を的確に把握し、県内企業の魅力を発信したい。

【資料館】
日沖議員 戦争に関する資料や遺品を気軽に閲覧できるよう、県は平成16年度からHPに戦争資料館を設けているが、21年度以降は全く手が入れられていない。後世に残すため、資料の追加や整理をすべき。

枡屋子ども・福祉部長 戦争の悲惨さと平和の尊さを考え続けるには、資料の継承が重要。資料館は多くの人に閲覧してもらってきた。戦後80年を契機に新たな資料を追加し、更新したい。見やすいよう工夫し、関連情報も充実させる。