【津】江戸時代全国を歩いて日本地図を作った伊能忠敬(1745―1818)についての講演が28日、三重県津市大門の津センターパレスであった。元県史編さん事務局職員で近世史に詳しい藤谷彰氏(63)=四日市市八王寺町=が「伊能忠敬測量隊がやってきた!」と題し、忠敬が県域で実施した測量について書状や記録を基に紹介した。
藤谷氏は「忠敬は商家の養子として酒屋をもり立て、名主(なぬし)になってからは佐原村の人を助けた。全国を歩き回ったのは隠居後の55歳から」「10回にわたる全国測量のうち4回までは自費で、5回以降に幕府の補助を受けた」と紹介。県域を歩いた第五次測量について、志摩半島や尾鷲の海岸線を細かく歩き精巧に記した地図を示した。受け入れた庄屋の記録などから「人足負担は千人を超え、出迎えには(現代の金額で)1440万かかった」「機嫌が悪く膳に手を付けないこともあった」と地元の苦労や頑固な一面に触れ「偉業は地元の協力の上に成り立ったもの」と述べた。
市内から訪れた高山京子さん(66)は「すごい業績だけでなく人となりも垣間見え、歴史が浮かび上がり面白かった」と感想を話した。
同講演は三重郷土会(会長・西川洋三重大名誉教授、会員約200人)が年3回開く研究会の一環で会員や一般から計65人が聴講。午後には同会理事の青山泰樹氏が「漢詩かるたの世界」と題して話した。