2024年9月30日(月)

▼生活保護受給者は自動車を保有してはならないという趣旨で生活保護を停止した鈴鹿市を相手取った裁判の判決で、原告支援者が津地裁前で「完全勝訴」と書いた紙を掲げた。市の「完全敗訴」を意味し、行政を担う立場としてこれほど市民の信頼を裏切ることはない気がするが、末松則子市長は「残念な結果だと考えている。今後は上級省庁、代理人弁護士と協議し、判決内容を精査して対応する」

▼役所や法律の専門家に意見を聞くのもいいが、政治家末松則子の考えはどうなのか。言うまでもなく、前例踏襲を何よりも重んじる行政マンがいて、法律を解釈する専門の助言者がいて、それらを踏まえて旧弊を打開して市民生活を守り、豊かにする政治家がいて、市政は成り立つ。鈴鹿市は政治家不在ということではあるまい

▼原告の女性が車の引き取り価格が千円であるとの見積書を市に提出したら、市は他2社以上から見積もりを取るよう求め、応じないことから生活保護を停止する処分を下したという。病人の布団をはいで物納に回したとする“酷吏”の故事を思い起こさせないか。2社以上から見積もりを取らせるというのも、公共事業発注の手法を福祉に転用したようで、いかにも役人らしい

▼相見積もりが行政に義務づけられるようになったのは、役人が業者と癒着するのを防ぐためである。裁判所は車の保有も認めないことも、見積書提出指導も違法とした上で、鈴鹿市の交通事情に触れて、車なしでは文化的生活は送れないと判示した。市長はお株を奪われた格好だ。