生活保護停止を取り消し 津地裁判決、鈴鹿市に命じる 自動車保有巡り

【「完全勝訴」と書いた紙を掲げる芦葉弁護士(右)と原告の女性(中央下)=津市中央の津地裁前で】

生活保護受給者による自動車の保有を巡り、生活保護を停止することは違法だとして三重県鈴鹿市の女性(72)が市を訴えた裁判で、津地裁(竹内浩史裁判長)は26日、市に生活保護の停止処分を取り消すよう命じた。

判決などによると、女性は障害を持ち、令和元年7月から生活保護を受給。市は女性に車の所有を認めず、女性は車の引き取り価格が千円であるとの見積書を提出した。

市は他に2社以上から見積書を提出するよう女性に求めたが、女性が応じないことから、市は令和4年11月、女性の生活保護を停止する処分を下していた。

竹内裁判長は判決で、「原告は短い距離を歩くのも困難で通院が必要。通院に福祉運送車両を使用するのは業者の実情から不可能で、その都度タクシーを予約するのも現実的ではない」と指摘。

「鈴鹿市で車は一般世帯で普及し、地域の交通事情からしても保有に違和感はない。保有を認めて自立を助長することが生活保護法の趣旨に添う」などと述べた。

その上で「車の保有を認めないこと自体が違法で、見積書の提出を求める指導も違法だ。この指導に違反した場合でも、生活保護の停止処分は許されない」と女性の訴えを認めた。

また「硬直的な市独自の運用で生活保護を停止し、検討が不十分なことは明らか。県から伝え聞いた国の意向も誤解していた」などとして、慰謝料など15万円を支払うよう市に命じた。

原告側の芦葉甫弁護士は判決後の記者会見で、「裁判所が車の保有を認めるべきと指摘した画期的な判決。今回のような判決を積み重ね、今後、制度が変わることを期待したい」と話した。

同市の末松則子市長は「市の主張が認められない残念な結果だと考えている。今後は上級省庁、代理人弁護士と協議し、判決内容を精査して対応する」とコメントした。