伊勢新聞

2024年9月27日(金)

▼「なんじゃそれ!」と、芭蕉翁記念館(伊賀市)の三重県立化を求めた同市選出の稲森稔尚議員が県議会一般質問で、のれんに腕押しのような一見勝之知事ら県側の対応に声を荒らげたらしい。「伊賀に県政なし」は歴代の伊賀地域選出議員の決めぜりふで、そう言いながら県の事業や譲歩を引き出すとも言われた。このところ聞かれなかったが、久々に“伝統”を感じさせて懐かしい

▼上野新都市整備事業として約244ヘクタールを整備した「ゆめぽりす」は、中核施設の運営団体を巡って県と地元議員とのぎりぎりの折衝があった。伊勢市のサンアリーナ同様、県教委を主張する地元議員に対し、県は上野市(当時)を譲らなかった。どちらも、赤字施設になることを懸念したやりとりだった

▼県は、基金を積み立ててその利息で運営する当時流行の手法を提案。渋る地元議員を基金額の積み増しで説得。低利息、利息ゼロの時代になって仕組みが崩壊したこともあり、その後の経緯は周知の通り。芭蕉翁記念館の経営状態は論戦の中では具体的に出てこなかったようだが、稲森議員が県立化を求め、県側が言を左右にしたのは経営状況があるに違いない

▼稲森議員は「人生最後の一般質問」と前置きして質問に臨んだという。同市長選に出馬予定らしく、県議として最後の質問という意味のようだ。地元議員として、地元への利益誘導を目指すのは当然の務めで、理論派である同議員がそうであっても不思議ではないが、互いの立場を熟知していて大声を上げたのは、心はすでに市長選か。