伊勢新聞

県立校、緊急安全点検へ 桑名北高のり面崩落受け、三重県議会一般質問

【(右から)山崎博議員、倉本崇弘議員、稲森稔尚議員、今井智広議員、廣耕太郎議員】

三重県議会は25日、山崎博(自民党、2期、四日市市選出)、倉本崇弘(草莽、3期、桑名市・桑名郡)、稲森稔尚(草の根運動いが、3期、伊賀市)、今井智広(公明党、5期、津市)、廣耕太郎(新政みえ、3期、伊勢市・鳥羽市)の5議員が一般質問した。台風10号の豪雨によって県立桑名北高(桑名市)でのり面が崩落したことを受け、福永和伸教育長は全ての県立学校で緊急の安全点検を実施する考えを示した。教職員から危険性のある場所について報告を受け、必要に応じて詳細な調査や対策を進める方針。倉本議員への答弁。

南海トラフ被害想定は
 山崎 博議員(自民党)

【山崎 博議員】

南海トラフ地震の被害想定について、見直しに向けた検討の状況を尋ねた。防災対策部は想定される死者数や倒壊家屋数だけでなく、災害関連死や帰宅困難となる観光客の想定も盛り込む考えを示した。

【被災地支援】
山崎議員 県は能登半島地震の発生翌日に物資を提供した。県内から被災地に派遣された職員は避難所の運営や家屋の被害認定調査などに当たったと聞くが、職員らはどう活動したのか。

楠田防災対策部長 県や市町、関係機関の約1万7千人が現地で支援に当たった。避難所では物資の搬入、雪かき、感染症患者の対応などに昼夜を問わず従事した。支援で得た気づきを6月にまとめた。南海トラフ地震対策に生かす。

【被害想定】
山崎議員 南海トラフ地震の発生が危惧される中で、地域や近隣の協力や自主防災組織の強化が課題。被害想定の見直しは進んでいるのか。能登半島地震の教訓を踏まえて策定する南海トラフ地震に特化した計画は。

楠田防災対策部長 有識者の検討会議を立ち上げ、平成26年3月に策定した被害想定の見直しを進めている。災害関連死や帰宅困難となる観光客も新たに想定する。南海トラフ地震に特化した計画には、自主防災組織の強化を盛り込む。

虐待の情報共有改善を
 倉本 崇弘議員(草莽)

【倉本 崇弘議員】

桑名市の長寿認定こども園で起きた虐待で、情報提供を受けた市が県に報告するまでに約1カ月を要したと指摘し、改善を要求。子ども・福祉部は市町に対し、速やかな情報共有を求めたことを明らかにした。

【安全対策】
倉本議員 のり面が崩落した県立桑名北高では幸いにもけが人はいなかったが、現場は災害時の避難所にも指定されている。以前から、地元では現場の危険性を訴える声があった。緊張感を持って対応してほしい。

福永教育長 県立学校のうち44校が避難所に指定されている。災害を見据えた万全の安全対策は学校設置者の責務。今回の事案を受け、全ての県立学校で崩落などの可能性がある箇所の調査を急いで実施する。

【虐待対応】
倉本議員 長寿認定こども園の虐待事案で特に問題なのは、市が保護者の訴えをを県に報告するまでに要した「空白の1カ月」。県は重く受け止め、速やかに報告が上がるよう、市町と連携すべき。

枡屋子ども・福祉部長 今回の事案では、市の第三者委から初動対応や情報共有の遅れを指摘された。県は不適切保育の情報を速やかに共有するよう、市町に求めた。発見者に通報義務を課すなど、制度の見直しに向けた国の検討も注視する。

芭蕉翁記念館の県立化を
 稲森 稔尚議員(草の根運動いが)

【稲森 稔尚議員】

松尾芭蕉は世界に誇れる偉人だとして、芭蕉翁記念館(伊賀市)の県立化を要求。一見知事は学芸員による知見の提供などで協力する考えを示しつつ、県立化の意向は示さなかった。

【記念館】
稲森議員 今年は松尾芭蕉生誕380周年。芭蕉翁記念館は築65年が経過した。老朽化が進み、収蔵スペースも手狭。市は20年近く前から新築に向けて検討してきたが、頓挫を繰り返している。県立化を。

知事 県出身の偉人は芭蕉だけでなく、江戸川乱歩や本居宣長、松浦武四郎らもいる。山形市は芭蕉の立派な記念館を作った。伊賀市にも、しっかりとした記念館を作ってもらいたいと思う。知見を持つ職員や学芸員が支援する。

【香害】
稲森議員 合成香料に起因する香害は少しずつ理解が深まっているが、頭痛や吐き気などの相談が寄せられている。香りへの理解や配慮がないことで学ぶ機会が失われてはならない。実態調査の結果と対策は。

福永教育長 全ての小中学校と県立学校を対象に調査したところ、176人が嗅覚過敏だと分かった。こまめな換気などの対策を取っている。香りの問題はデリケートで指導には十分な配慮が必要。対応の好事例を学校に紹介する。

入札方式審査検証を
 今井 智広議員(公明党)

【今井 智広議員】

公共工事の入札で技術評価を審査する総合評価方式の公平性を確認するため、審査方法を検証するよう求めた。県土整備部は一部の入札を抽出して検証する方向で検討する考えを示した。

【指定管理】
今井議員 県は33の施設を指定管理者制度で運用しているが、現場からは「賃上げができない」「人件費を増額してほしい」との声がある。物価や賃金の情勢に応じて指定管理料を見直しているのか。

後田総務部長 これまでも感染拡大防止での臨時休館やエネルギー価格の上昇などを受けて対応してきた。人件費も上昇傾向にある。指定管理料の適切な再算定に向け、早ければ12月補正予算で対応できるよう庁内に周知する。

【入札方式】
今井議員 総合評価方式の入札は公平性と透明性の向上が必要。技術提案に対する評価の方法は非開示で、業者から「適正に採点しているのか」との声がある。公平な採点をしているかをチェックしては。

佐竹県土整備部理事 これまでも公平公正に審査しているが、企業から「採点方法の基準が不透明」との意見がある。サンプル検証など、公平性を高める取り組みを検討する。審査結果の公表でも、透明性を高める取り組みを検討する。

被災者に応じた支援を
 廣 耕太郎議員(新政みえ)

【廣 耕太郎議員】

それぞれの被災者に応じた支援を進める「災害ケースマネジメント」に対する県の認識を尋ねた。防災対策部は災害ケースマネジメントの実施に向けて、関係機関との連携を構築する考えを示した。

【防災】
廣議員 元気な人は窓口で災害時の支援を要望すると思うが、自ら声を上げることができない人もいる。一人一人に寄り添って支援する災害ケースマネジメントの考え方について、県はどう捉えているのか。

楠田防災対策部長 これまでは被災者の申請に基づいて支援する手法が中心だったが、生活再建に結びつかない課題があった。能登半島地震でも、災害ケースマネジメントによる支援が進められている。

【ワクチン】
廣議員 新型コロナウイルスのレプリコンワクチンは米国で開発され、ベトナムでの治験を経て日本だけが承認した。10月から定期接種が始まるが、正しい情報を伝えるべき。

松浦医療保健部長 10月からの定期接種では5社のワクチンが使わる見込みで、うち1社のワクチンがレプリコンに該当する。少ない接種量で効果が長く続くことが期待される。接種するワクチンを事前に明示するよう、市町に依頼している。