【鳥羽】三重県鳥羽市相差町の現役海女で、「三代目久兵衛」代表の松本理沙さん(39)が作る完全天日塩「アマノイソシオ」。地元の磯場からくみ上げた海水を使い、火力を一切使用せず、太陽と潮風の自然の力だけでゆっくりと結晶化させている。幼い頃から慣れ親しんだ地元の海で海女文化を継承し、塩作りを通じて自然との共存を実践している。
同町で生まれ育った松本さんは、海女だった祖母の影響で28歳ごろから海に潜るようになった。母親が営んでいた弁当屋を改装し、平成30年から、海女漁で捕った海産物などを提供する「海の食堂 久兵衛」を切り盛りしている。
海女漁を行う中、海の環境の変化や獲物となる海産物が減っていると実感。海の環境が変わってもなくならない海水で塩を作ろうと考え、昨年夏に製塩の拠点となる「結晶ハウス」を建てた。
海水をくみ上げ、結晶箱に入れて太陽と潮風で蒸発させる。塩になるまで夏場は早くて約2カ月、冬場は5―6カ月かかるという。海水と塩をかき混ぜる攪拌(かくはん)作業は、結晶箱の様子を見ながら1日何回も行い、作業の合間にお店に立ったり海女漁に行ったりして1人3役をこなす。
現在は、細粒タイプの「白磯」と粗粒タイプの「黒磯」の2種類を商品化。日照時間や結晶ハウスの室温の変化によって微妙な味わい、香りの違いがあるという。価格は100グラム4320円、40グラム2160円。食堂やオンラインショップで購入できる。食堂ではアマノイソシオを使った自家製豆腐を提供し、来店者の人気を集めている。
松本さんは「今後は料理や調理法、食材に合わせたオーダーメイドの塩を作っていきたい」と笑顔で話した。
食堂の営業時間は午前11時―午後3時。水曜は休み。問い合わせは同店=電話0599(33)6808=へ。