伊勢新聞

2024年9月21日(土)

▼例年ならこの時季、秋風が立って秋色が深まる。しかし、今年はどうだろう? いっこうに秋の気配がない。旧暦だとすでに8月7日が「立秋」で秋は始まっている。そして、「中秋」には「中秋の名月」があり、今年は9月17日が該当したが、各地で熱帯夜となった

▼さらに、この22日は「秋分の日」で、その前後3日間が「秋のお彼岸」だ。お彼岸にはお墓参りが欠かせないが、気温25度を超える「夏日」の中で、心がこもった先祖供養ができるだろうか。「暑さ寒さも彼岸まで」と言うが、暑さは多少弱まるがまだ続きそうだ

▼俳句の世界では、8月、9月、10月の3カ月を秋としており、秋の季語は豊富だ。伊賀で生まれ育った俳聖・松尾芭蕉は、秋の句を多く残している。特に「秋風」の句は20句を超える。このうち、「秋の風伊勢の墓原なほすごし」は、「奥の細道」の翌年、46歳で式年遷宮を拝むために、伊勢を訪れたときのもの。神の国とされる伊勢で墓原が広がる中、秋風が吹く寂寞たる情景を詠んでいる。この先、芭蕉が詠んだような秋風は吹くのだろうか? 伊勢に秋はいつ訪れるのだろうか?