伊勢新聞

2024年9月19日(木)

▼女子高校生と話して「うざいです」と言われてきょとんとしたことがある。「不快だ」「気味が悪い」などの意味の若者言葉だと後輩が教えてくれた。そう言えば「ナウい」という言葉も流行していたが今はどうか。古くさい気がする

▼時代とともに新しい言葉が生まれる。昔からの言葉に違った意味を持たせるケースもある。新鮮でもてはやされるが、古くなるのも早い

▼「やばい」は具合が悪い、危険などを表す犯罪者、やくざなどの隠語だったが、今はすごい、最高など、肯定的な意味が加わり、若者に広がっているが、使う人、場合によって意味が違ってきて、やがて共通語の役割を果たさなくなるのではないか。特定の集団の中で生き残るか、衰退の道をたどるか

▼文化庁が16歳以上6千人を対象にした国語世論調査で「動物などがふんわりと柔らかそう」との意味で「もふもふ」を使う人が5割を超えた。「時間や手間をかけない」ことを「さくっ」、「ゆったり、のんびりする」を「まったり」と言う人も

▼豊かな感性がうかがえて使ってみたくなるが、「ナウい」のように、使いこなせた時には誰も使わなくなっているのではないか。日本の言文一致体小説は二葉亭四迷の『浮雲』が初めとされる。それまでは書き言葉は文語で話し言葉とは大きな距離があった

▼若者言葉を駆使した傑作小説が出てきてもいいが、未来社会を描いた星新一は電話などの進歩を気にして一部修正していたという。後世の読者に苦笑されたり、きょとんとされては作家も本意ではあるまい。