▼任期満了までの期間に差があるとはいえ、自民党総裁、立憲民主党代表の選挙は相当前から意欲を燃やす候補がいるのに、知事選挙となると直前まで態度を鮮明にしない。政策、人物が分からぬまま投票しなければならないことが少なくなく、特に県政交代期はその傾向は強かった
▼任期満了(来年9月12日)まで1年を切った一見勝之知事も、その例外ではない。記者会見で再選出馬の態度を問われ「現時点において、私が定見を持っているわけではない」。早ければ半年前で3カ月前もあり得る現職の出馬表明時期を踏襲しているかに見える
▼言葉通り「定見」を持っていないと信じる県民は少ないのではないか。すでに腹を固めていて、あとは表明の時期だけ。選挙戦に最も有利な時期を見定めているという見方だ。あまり早く表明しては選挙までの期間、例えば事務所維持経費などの出費がかさむ。直前過ぎては有力な新人が出てきた場合、遅れを取る危険があるなどだ
▼県知事選にはまた、ジンクスがある。先に表明した方が負けるというジンクスだ。このため、県民に積極的に政策を訴えて評価を得るより、政治情勢を見極めることが重視される
▼一見知事の去就について、県幹部は「知事のやる気を見ている限り」、議会最大会派「新政みえ」は「今のところ一見県政に大きな失態はなく」―いずれも再選出馬は確実とみる。県民には分かりづらくないか。県をどこにリードしていこうとしているか
▼活発な論戦で県民の選択肢を広げるなどの構図は期待できそうにない。