▼何かの拍子でバランスを崩しても、転ばずこらえて仲間内で二枚腰を誇ったのは若いころ。1、2年前だったか、妻がバトミントン選手で、本人もなかなかの腕前の演歌歌手の新沼謙治さんが、道路で片足を跳ね上げたら体勢を崩し、転倒して頭から大量出血。65、6歳のころで、年なのかと本人が驚いていた
▼ちょっとした仕切りを跳び越えようとしてつま先がひっかかり、転倒した経験は複数回ある。駐車場の車止めにつまづいて骨折した知人も。市の施設で、小さな段差を色分けして注意したつもりが高齢者の転倒が続出したということもあった。「溝や隙間」で高齢者の事故が発生しやすいと、敬老の日にあたり製品評価技術基盤機構(NITE)が注意喚起している
▼「溝」では福井県の80代女性が5年前、電動車いすが側溝に落ちて死亡したという。一つの死亡事故の背後に複数の転落事故がある。6月の県議会で津市が昨年度、30カ所の側溝整備を要望したが、実現は1カ所だけ。県土整備部長が「優先度の高い所から実施している」と答えていた。高齢者の安全は、優先度にどの程度関係しているか
▼日本が高齢化社会に突入したと言われたのは昭和45年から。65歳以上の高齢者割合が人口の7%を超えた。食事も住宅も社会のインフラも、高齢化仕様になることだと言われた
▼それから半世紀。高齢者にとって社会の構造は危険がいっぱいとNITEは指摘している。高齢者にとってだけではないということで、高齢化社会はるか、ということである。