2024年9月13日(金)

▼国道42号を東紀州に下ってガソリンスタンドなど沿線の商店で道順などを尋ねると、しばしばクマ出没の話題になって緊張する。山ではなくても、国道や高速を外れて脇道に入ると、クマとの遭遇率は高まるようだ

▼大紀町大内山のツヅラト峠を先月14日、1人で下山していてツキノワグマに襲われてけがをした大阪府の70代女性はクマよけの鈴を携帯せず、登山中は杖で音を立てていたが、襲われた当時は登山口に近いこともあって使っていなかったという。不用心極まるが、県が「クマアラート」(警報)を発表したのは翌日の15日。出没情報は多くても、まさか襲われるとは大阪府住民ならずともあったのかもしれない

▼熊本県がマスコットキャラクターに「くまモン」を展開したのは平成22年。たちまち人気者になり、同県をアピールするゆるキャラとして愛されるが、現実のツキノワグマは50メートルを最速3、4秒で疾走。大きく長い爪は横殴りに右の顔をえぐり、傷口は右目から左目下まで達するという

▼大阪府の女性はツヅラト峠登山口付近の林道のカーブを曲がった地点で20メートル先のクマと遭遇。一瞬後ろを向いてから向き直ったが、クマは走って向かってきて、頭や太もも、左肩を爪で引っかかれ、右足を骨折したという

▼4月以降の確認されたクマの出没件数は93件で、昨年度中の40件をすでに上回って過去最多。クマの生息地と人間の活動領域のバランスが急速に崩れてきていることを物語る。まずは、クマとの遭遇を避ける万全の備えが欠かせない。