伊勢新聞

2024年9月2日(月)

▼自転車とかジョギング並みと言われる台風10号の速度。1日正午に県に最接近とされたが、津市の空模様にその気配はなく、紀伊半島沖にとどまっているという。隙をうかがわれているようで落ち着かない

▼異例の事態に、情報などを提供する津市の緊急メールも戸惑うか。高齢者の避難準備などを促すメールが地区ごとに次々入ってくるが、1時間後ぐらいに次々解除メールが入り出す。繰り返されればオオカミ少年にならぬか

▼能登半島地震を教訓に、津市は市外からの応援部隊を受け入れる「災害時受援計画」を更新することにした。そのために4月に災害対応研修会を開き、能登半島に赴いた消防、警察、自衛隊から課題を聞いた。指摘されたのは災害対策本部と派遣部隊との情報共有の難しさという

▼3部隊が同じ場所で捜索していた(警察)、安否情報に行き違い(消防)、被害や支援状況を共有する会議の遅れ(自衛隊)など。情報の共有の難しさは昔から課題の定番で、かつてはそれぞれの機関が使用する無線などに互換性がないことだった。指摘されながらなかなか改善されなかったのは“機関の論理”が優先されたふしがある

▼伊勢志摩サミットの時、海上保安部の幹部が苦笑いしていた。警察にも海上警備の部門があり、陸海総指揮を取りたがる。「海上は我々に任せてくれればいいのに」。津市が5月に実施した図上訓練は極めて厳しい結果に終わったという。川口淳・三重大教授の講評は「集約情報の一元的分析・整理ができていない。各機関の総合的判断に使いづらい」

▼古くて、新しい指摘である。