伊勢新聞

2024年8月29日(木)

▼北海道で生まれ育って三重に来て、似ているなと思ったのは郷土自慢を声高にしないこと。東京では九州各県出身の後輩らと暮らしたが、出身県をからかうと本気で怒り出すのには驚いた。歴史の浅い北海道でそんなむき出しに郷土愛を語ることはないが、三重も他県の人と接するせいか、地元批判は聞き流すところがある

▼三重の女性と結婚してただ一つ、違うと感じたのは台風に対する警戒心である。直撃予報などが入ると窓などのカギを確認し、飛ばされそうな物を片づけ出す。台風が昔はなかった北海道育ちと、親の代から恐ろしさを体験している違いなのだろう

▼県内の死者・行方不明者10人を出した平成16年の台風21号は、だから心が震えた。宮川流域で甚大な被害を出したが、津市でも国道23号が川となり、自動車が何台もぷかぷかと流されていた。降り続く雨が怖かった

▼今度の台風10号は伊勢湾台風並みの規模という。速度が異常に遅く、火曜日と予測された県接近が金曜日に変更され、なお不安定。長くとどまる可能性もある。すでに断続的に雷雨に見舞われ、鳥羽市や志摩市などで約4900戸の停電が発生している。鉄道、道路の信号機が誤作動状態となり、ノロノロ運転だった台風一過の悪夢を思い出す

▼昨年の台風7号で事務所の屋根が飛び、成木200本が被災した御浜町のみかん農家ではテントに重りを置くなどして強風に備えたが「事前にできることは限られる」。自然の猛威に人間の無力さを思い知らされる昨今だが、できる限り備えは尽くしたい。