伊勢新聞

2024年8月28日(水)

▼プログラマー30歳定年説というのが昭和40年代にはあった。コンピューターの著しい進歩について行けるのは30歳までだというのだ。当時、コンピューター関連の業界紙記者をしていて、その仕組みや理論は本や耳学問で仕入れていて、自分には関係ない話だと思っていたが、10年ほど業界を離れていたら浦島太郎になっていた

▼用語が理解できないし、昔の言葉は通じない。社会にカタカナ語があふれ、若者言葉は日本語の短縮や意味の転換などだけでなく、IT用語も切り張りする。本紙『中高生のためのデジタルエチケット』の見出しが「タイパ時代の作品鑑賞」。著者の湯口太郎・一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構事業本部事業担当部長が倍速視聴では音楽などのよさは味わえないと説いているのだが「タイパ」って何か

▼「タイム・パフォーマンス」のこととある。短い時間をいかに有効に使うかという意味らしい。テレビドラマで「コスパ」という言葉が出てきて聞き流していたが、なるほど「コスト・パフォーマンス」のことだったかと得心する

▼『七人の孫』から『寺内貫太郎一家』への10年間で、400字詰め原稿用紙の枚数が10枚ほど増えている、と脚本家の向田邦子さんが書いていた。世の中が早口になっている。高齢者は住み慣れた土地を離れると老化が進むと言われる。言葉が聞き取れず、孤独になっていくからという

▼時代劇の再放送を見るのが定番とされているが、最近のドラマでは聞き取れないせいかもしれない。世代間断絶は進んでいく。