伊勢新聞

2024年8月23日(金)

▼前葉泰幸市長から国に対する中空アクセス航路の支援要請を受けて一見勝之知事は「離島のように住民の命に関わる航路ではない」として「(国による支援は)なかなか厳しい」

▼「(国への)要望はやぶさかでないが、相当な理屈を作らなければ」と続けたのに対し、前葉市長は「運輸省出身の知事にとっても、県内の海上アクセス航路がなくなればえらいことになると思う。もう一歩、本腰を入れて取り組んでもらいたい」

▼2人は同じ国出身ながら、旧運輸省の一見知事に対し、前葉市長は旧自治省。言葉の応酬は、省庁間の折衝ごともかくや、と思わせる。要望書も「津航路は県内で唯一、県と世界を結ぶ海の玄関口。県を支える要衝と受け止め、一緒になって支えてほしい」。古巣に対してそのぐらいの影響力はあろうというニュアンスがにじむ

▼中空アクセス航路は3航路案から出発し、一航路案に絞り込まれたが、野呂昭彦氏が松阪市長から知事になる流れの中で、松阪、津の2航路となり、松阪航路が廃止された。津も、当初は大勢の見学客でにぎわったが、その勢いはない

▼中部空港への直通バス路線も廃止になり、海外インバウンドを狙う一見県政としては厳しい状況と言えなくはない。知事としても「相当な理屈」で国の支援にこぎ着けたいところかもしれないが、その先をどうするかの展望が見えない。焼け石に水、あるいは泥沼に足を取られかねない

▼津航路は津、亀山両市以外の利用者が約6割と前葉市長。旅行社並の旅客拡大戦略も必要になるのではないか。