【鈴鹿】三重県鈴鹿市江島本町の白子公民館で20日、終戦79年記念企画「シベリア抑留体験者は語る&追悼演奏」があり、40人が聞き入った。
「極寒・飢え・重労働に耐えた日々~戦争からは何も生まれない、平和を噛みしめる」と題して、県内最年少の抑留体験者稲垣貞治さん(94)=津市久居新町=が、公の場で初めてシベリアでの捕虜収容所体験を語った。
稲垣さんは昭和20年8月の終戦後、15歳で軍属見習い工として働いていた満州ハルピンからシベリアへ連行された。ハバロフスクから西へ約280キロのイズベストコーワヤの捕虜収容所など2収容所で約2年間の抑留生活を送った。
食事は黒パンと豆のスープ、氷点下40度の極寒の中、毎朝の水くみや鉄道の枕木運びなどの重労働で、仲間が次々と亡くなっていった。ノミやシラミで体中がかゆくて眠れない夜は、空に輝く北斗七星を見上げて故郷を思い出し、こんな所で死んでたまるかと歯を食いしばったと語った。「今起こっている悲惨な戦争が一刻も早く終結し、皆が平穏に暮らしてほしい」と祈念し、平和の尊さを訴えた。
全国強制抑留者協会三重県支部の野原國雄支部長(99)は「自分と同様の体験をした方の話を直接聞くことができてよかった」と話していた。
講演後、サクソフォン奏者の一尾郁美さんによる追悼演奏があり、参加者らは「異国の丘」「誰か故郷を想わざる」などを口ずさんでいた。