伊勢新聞

2024年8月21日(水)

▼言葉が分からないと映画の微妙な奥行き、面白さは分からぬのではないか。フランスのスター俳優アラン・ドロンも『太陽がいっぱい』のポスターで身近に感じてきたというぐらいで語る言葉がないのは日本の大勢のファンに申し訳ないが7月初め、テレビのトーク番組『徹子の部屋』で、ゲストの映画評論家、浜村淳さんのエピソードが面白かった

▼映画の公開に合わせて来日した時、浜村さんはいかに大ファンで影響を受けてきたかをアピールしたそうだ。『お嬢さん、お手やわらかに!』を見て金のネックレスをつけ、『あの胸にもう一度』を見てバイクを乗り回した、と

▼ドロンは大変喜び、当時経営していたメガネ店からメガネをプレゼントすることを約束してくれたが、空約束に終わった。メガネは届かなかったという

▼『徹子の部屋』でホストの黒柳徹子さんとゲストの間で物を贈る約束は時々あり、確実に実行されているようだが、両者の関係ということもあるだろう。芸能界でも政界などの「今度メシ食おう」みたいにその場の雰囲気で、互いに期待しない“約束”もあるのではないか

▼県議会を担当したころ、個人的関係をつくりたくて、片っ端から県議に「飲みに行きましょう」と声をかけた。大抵その場限りだったが「よし」と応じられたのが大変な酒豪。こちらは下戸に近く、酒席は持ちこたえたが、別れてどうしたか。気がついたら、キャバレーの客席で寝ているのをボーイに「閉店です」と起こされた

▼アラン・ドロンの何のフォローにもなっていないが。