伊勢新聞

初のクマアラート警報 ツヅラト峠で女性襲われ負傷 大紀、紀北町に三重県

ツキノワグマによる人身被害が発生したことを受け、三重県は15日、大紀町と紀北町に「クマアラート」(警報)を発表した。アラートの発表は初めて。町民や登山客らに注意を呼びかけている。

県によると、大紀町大内山のツヅラト峠で14日午後4時ごろ、登山中だった大阪府内の70代女性がクマに襲われた。女性は頭や太もも、左肩を爪で引っかかれ、右足を骨折したという。

女性は当時、下山中だった。別の登山者が119番し、伊勢市内の病院に救急搬送された。現場は町内の集落とつながる林道で、集落からは350メートルほど離れているという。

この事故を受け、県は現場の大紀町と近くの紀北町にアラートを発表した。期間は15日から2カ月間。クマのえさとなる生ごみなどは処分し、山では鈴やラジオを携帯するよう呼びかけた。

両町はアラートの発表を受け、ツヅラト峠の登山口に注意喚起の看板を設置した。大紀町は防災無線を通じて町民らに事故の発生を伝えたほか、猟友会と連携してパトロールを強化している。

一見勝之知事は「住民や来訪者が安心して生活できるよう、パトロールの強化、捕獲、駆除などの対応を取る。山へ入る場合は十分な安全対策と万全の注意を払ってほしい」とコメントした。

県はツキノワグマの出没が相次いでいることを受け、今月9日付でアラートを導入。出没の件数が基準を超えるなどした場合は注意報、人身被害が発生した際は警報を発表すると定めていた。

県内では爪痕などの発見を含むクマの「出没」が、今年4月1日から今月14日までで68件に上る。既に昨年度中の40件を超え、記録が残る平成18年度以降では最多となっている。