伊勢新聞

2024年8月16日(金)

▼岸田文雄首相の自民党総裁選不出馬表明に一見勝之知事がコメントした。「続投されるものと思っていたところ、突然の発表に驚いた」。大方の県民共通の思いだろう。「7月31日には亀山市のリニアボーリング調査現場とVISONを視察いただいたところだった」と続ける

▼「あれは一体、何だったのか」などと、恨みがましいことは言わない。派手なパフォーマンスなしの首相の振るまいを政治家としての好感度として評価した。終わりに「引き続き日本のために活躍されることを祈念する」と、見方によっては含みのある言葉で余韻を残しているだけである

▼首相の地方視察が、総裁選を意識した行動であったことは指摘されていたが、果たしてどうだったか。そのことでの感触が突然の不出馬表明につながったのかとともに、今となっては分からないが、記者会見では「今回の事案(裏金問題)が発生した当初から思い定め」ていたことだという。その割には、いったん発表した方針を、その後の反響で後退、前進させるなど、覚悟が定まってないように見えた

▼亀山市内のリニアボーリング調査視察では「皆で力を合わせてやっていこう」と呼びかけ、記者会見で「駅位置やルートの選定を加速する必要がある」とリップービスに努めた。国土交通省とJR東海を名古屋以西の沿線府県で構成する実務者会議に参画させる考えを示し、加速の現実化に大いに期待させた。なかなかのパフォーマンスの気もしたが、政治家としてはなお半ばなのかもしれない

▼着々と成果となることを知事とともに祈念するばかりだ。