伊勢新聞

大観小観 2024年8月12日(月)

▼南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表で、県内でもじわり影響が広がっているようだ。県内でも、東南海地震にたびたび被害を受けてきた東紀州地方がより敏感なようなのは、防災意識を考える上で興味深い

▼紀北町は海水浴場を一時閉鎖したほか、10日に開催を予定していた「きほく夏祭りKODO」も延期した。来場者の安全確保が難しいというのが実行委員会の判断である。同町東長島のホテルでは10日―17日の宿泊予約のキャンセルが相次いだ。新型コロナの悪夢の再現。災害を織り込んだ経営が求められる時代になっているのかも知れない

▼東海道新幹線の運行速度を遅らせることにしたJR東海の幹部は「こうした対応は同新幹線60年の歴史で初めて」と言ったそうだ。ちょっとした風雨ですぐ止まり、天候に弱いことをやゆされてきたことは念頭にないようだ。対策を強化した後も新潟県中越地震や東日本大震災で脱線している。自然の猛威に初めて畏敬の念を抱いた対応ということでもあろうか

▼同新幹線に運休の可能性も出てきたことで、日本の大動脈の脆弱(ぜいじゃく)さが改めて問われている。リニア新幹線も、その代替機能が考慮されているかなど「平常時の需要だけでなく、緊急時に役に立つかどうかを検討」すべきだと専門家

▼その欠落が高度成長の陰の側面として指摘されてきた。伊勢湾架橋を含む国土第二軸構想も需要優先論の前に敗れた感がある。高齢者や障害者が安心・安全に移動できるかも、臨時情報発表を機に検討しておかなければなるまい。