伊勢新聞

林業と生物多様性の共存考える 尾鷲「みんなの森」で環境活動家・坂田氏が講座 三重

【坂田氏(左端)から森林環境について説明を受ける参加者ら=尾鷲市九鬼町の「みんなの森」で】

【尾鷲】三重県の尾鷲市は5日、同市九鬼町の市有林「みんなの森」で、環境活動家の坂田昌子氏を講師に迎え、林業と生物多様性の共存を考える講座「ネイチャーポジティブ森編」を開いた。参加者らは森の散策などを通じて自然との関わり方を学んだ。

市によると、持続可能な森林経営に向け、令和3年度から、みんなの森の整備を進めている。市は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ」を掲げ、農林水産業を後世に引き継ごうと、取り組んでいる。

みんなの森は、樹齢60年を超えるスギとヒノキが並ぶ市有林の一部。当初は泥が水流を停留させ、熊野灘に注ぐ宮谷川の水脈を寸断していた。今年1月から坂田氏が同所の保全や管理に携わり、作業員らと水脈を掘り当てる作業を進めている。

この日は、市内外から14人が参加した。坂田氏は「当時は砂地が出るまで泥を取り続け、最大2・2メートルも掘った」と説明。「流路は水の流れに任せると崩れない」とした上で、枝と落ち葉で泥の流出を防ぐ柵「シガラ」を作る重要性を語った。

また、整備前の本流との合流地点は「流れが急で生き物が住めない環境だった」と話した。今は止水に近い形で流れを作っているといい、川底を泳ぐアカハライモリなどが確認できた。参加者らは観察したり、網ですくって触ったりしていた。

その後、坂田氏はシガラの作り方を実演。「枝と枝を絡ませて立体的に作り、落ち葉は空間に対して縦に入れる」などと解説した。参加者らは実際に体験し、枝を絡める力加減に苦戦。ノコギリで長さを調節しながら、高く積み上げていった。

両親と3人で参加した松阪市立豊地小5年の池添環さん(10)は「折れやすい枝もあったが、完璧にできて良かった。家の近くの裏山でも作ってみたい」と感想を話した。

坂田氏は「市民が自然に貢献できる一つの形を示せたと思う。市有林でも、関わることで共有財産になる」と強調。同所の変化について、「水質は屋久島に並び、生物も大幅に増えた。生き物たちに答えを出してもらうことが大事」と話した。

市は今月31日に開く「ネイチャーポジティブ海編」の参加者を募集している。市職員の石川達也主任水産技師が講師を務め、磯の採集や海藻の押し葉作りを体験する。参加費は無料。市のホームページから専用フォームに必要事項を記入して応募する。問い合わせは市水産農林課=電話0597(23)8231=へ。