伊勢新聞

2024年8月7日(水)

▼仏教の百八つの煩悩の中でもっとも恐ろしいのが三毒といわれ、その筆頭が貪欲。具体的には食欲、色欲、財欲、名誉欲、睡眠欲の五欲を指すらしい

▼俗に「色と欲との二筋道」というのは性欲と物欲の二つを同時に満足させようとたくらむこと。生命を維持する食欲を別格とすれば、人間を人間たらしめるのは色欲と物欲になろうか

▼5日も県内には詐欺被害が相次いだ。全3件のうち2件が「妊娠示談金」で、1件が「投資詐欺」だが、被害者の40代女性はマッチングアプリで知り合った男性名の人物をLINE(ライン)登録し、暗号資産などを勧められて、数度にわたってだまし取られている。ロマンス詐欺の疑いも捨てきれない

▼妊娠させたという息子を名乗る人物からの電話で示談金・慰謝料をだまし取られたのは70代と80代の無職女性。実際の息子は30―40代といったところか。とうに成人に達し、結婚していてもおかしくない年頃だろうに、親というのはありがたい。近鉄駅前まで呼び出され、弁護士の手伝い、おいという身分も定かでない人物に、それぞれ200万円、480万円を渡している

▼オレオレ詐欺以前に頻発したのは料金未納詐欺で、その中心はアダルトサイトの利用。子どもの有料サイト利用による巨額請求が社会問題になっていた背景がある。詐欺の手口は常に社会現象を巧みに取り入れている。息子たちが無事にやっているか。困っていはしないか

▼時代を問わず変わらぬ親の姿が浮かんでくる。つけ込む詐欺師への憎しみがいやまさる。