三重県は県民や事業者などに公金を振り込む際の手数料を、10月分から金融機関に支払う。これまでは無料だったが、適正な経費負担を求める総務省の通知などを踏まえて見直す。4月分から負担している窓口収納業務の手数料を含め、少なくとも年間で約3千万円の負担増となる見通し。
県によると、手数料は振り込みの方法や振込先によって異なるが、税別で1件あたり38円から262円を県が指定金融機関に支払う。職員の給与は従来通り、無料で振り込まれる。
加えて、事務処理ミスなどによって振り込み先を誤った場合に取り消す「組戻し」の手数料(300円)も、同じく10月から県が負担する。組戻し後に改めて振り込む手数料も必要となる。
これに先立ち、県は4月から、県有施設の利用料や貸付金の返還分などを県民や事業者に納付してもらう際の手数料(33円)を、金融機関に支払っている。この手数料も従来は無料だった。
これまで公金の振り込みは、指定金融機関が無料で引き受けてきたという。県出納局の担当者は「少なくとも百五銀行が県の指定金融機関となった昭和39年度以降は無料だった」と話す。
一方、総務省は令和4年3月、公金収納事務の適正な経費負担に向けた見直しを求める通知を都道府県などに発出していた。百五銀行も同じ頃から、県に手数料の負担を求めていたという。
この通知や百五銀行からの要望などを踏まえ、県は窓口収納や振り込みの手数料を支払うことを決定。支払いに備え、本年度の当初予算に手数料として約2800万円を計上していた。
一方、本年度は振り込みの件数が想定よりも多かったことから、県は年内にも手数料の追加分を計上した補正予算を県議会に提出する方針。追加分は数百万円程度とみられる。
県内では、多くの市町が県と同じく10月分から振り込み手数料を指定金融機関に支払う見通し。一方、農協を指定金融機関とする一部の町は、現段階では手数料の支払いを見送るという。
出納局の担当者は「銀行の収益環境が厳しく、手数料の支払いは全国的な傾向」と説明。手数料の金額は「指定金融機関と議論して決めた。全国に比べて高いわけではない」と話す。
組戻しの手数料が発生することについては「組戻しの手続きをするほど県の負担が増えるため、これまで以上にミスを防ぐ必要がある。振り込みの作業は慎重にしたい」としている。