伊勢新聞

2024年8月6日(火)

▼恥ずかしながら、携帯電話はガラケーである。大陸から隔絶した環境で生物が独自の進化を遂げた南太平洋のガラパゴスになぞらえてこの名がある

▼かつては世界に先駆けて日本独自の各種機能を発展させたが、世界市場で競争が激化すると、閉鎖的なメーカーが乱立した日本市場は、スマートホンとの競争に押されていく。「修理対応は終了しました」「通信機能の提供を、まもなく終了します」「スマホの紹介をしますのでこの機会に来店を」などの連絡メールがひんぱんに通信業者から入ってくる

▼直近はポイント付与による交換の勧めだ。外堀が埋められ、損得勘定がくすぐられる。故障するか、期限いっばい使おうという決意がたちまちぐらついてくる。電話番号案内の「104番」と、業種別に企業・団体の番号を掲載する電話帳「タウンページ」の発行が令和八年3月で終了する

▼東西のNTTによると、スマホの普及などでタウンページへの広告掲載数や番号案内の利用が減少しているから。紙資源消費の削減や、個人情報保護の観点からも決断したと言われると反対もしづらい。「スマホなど」の検索方法を知らないし、業者探しにタウンページが必携だったが、そんなことは蟷螂(とうろう)の斧(おの)にもならない。そういえば「104番」有料化に憤慨し、自宅の電話番号掲載は拒否していた

▼小さな不便をところどころに残しながら、新たな仕組みに対応しなければ暮らせないのが現代社会。ガラパゴス島に閉じこもっているのは不可能だ。明日にでもスマホを見に行くとするか。