岸田文雄首相は31日、リニア中央新幹線の駅位置選定に向けてJR東海がボーリング調査を実施している三重県亀山市菅内町の現場を視察した。岸田首相がリニア名古屋以西の現場を視察するのは初めて。視察後の記者会見では「駅位置やルートの選定を加速する必要がある」と強調し、名古屋以西の沿線府県で構成する実務者会議に国土交通省とJR東海を参画させる考えを示した。
岸田首相は午前11時過ぎ、ボーリング調査の現場に到着。一見勝之知事やJR東海の宇野護副会長が調査の状況などを説明し、岸田首相は「皆で力を合わせてやっていこう」と呼びかけた。
視察後の会見では、リニアの早期全線開業に向けて三重、奈良、大阪の3府県が立ち上げた「建設促進連携会議」に、国交省とJR東海を正式なメンバーとして参画させると表明した。
これまでJR東海と国交省はオブザーバーとして会議に参加していた。8月中にも正式なメンバーに加わる見通し。リニアの早期開業に向けた取り組みを後押しする狙いがあるとみられる。
また、岸田首相は保守用車両の事故や大雨によって東海道新幹線の運休が相次いだことに言及。「三大都市圏を結ぶ複数のネットワークの早期構築の重要性を改めて認識した」と語った。
一見知事は視察後の取材に対し、国交省とJR東海が会議の正式なメンバーとなることについて「名古屋以西の駅位置やルートを決めるに当たっての議論が今までより進むと思う」と述べた。
亀山市では今回の調査現場を含む3カ所が駅位置の候補となっている。JR東海はボーリング調査の結果などを踏まえて駅位置やルートを絞り込み、環境影響評価手続きを経て着工する方針。
一方、JR東海は静岡工区の遅れにより、品川―名古屋間の2027年開業を断念。政府が目標に掲げる名古屋―大阪間を含めた2037年の全線開業は困難な情勢となっている。
岸田首相は多気町の商業リゾート施設「VISON(ヴィソン)」も視察し、デジタル地域通貨「美村PAY」による買い物などを体験。自動運転の電気自動車で敷地内を移動した。
岸田首相の来県は伊勢神宮を参拝した昨年1月以来で、岸田政権発足以降としては3度目。今年1月4日に予定していた伊勢神宮参拝は、能登半島地震の発生を受けて見送っていた。