伊勢新聞

2024年7月30日(火)

▼おや、まだやっているのかと思ったのは退職県職員の再就職状況の公表だ。いったん決めたら継続するのが県などお役所仕事というものではある

▼天下り批判に対応する改革の一環として野呂県政当時、県がOBの再就職あっ旋を取りやめることにしたのが、この制度の出発点だが、現行制度は平成29年からという。天下り廃止の精神は跡形もなく、制度は「退職職員活用」へと目的を変えて、団体・企業に退職職員名を情報提供して再就職したOBを公表する。原点は何だったか、分からなくしてしまったのも県らしい

▼3月退職した職員の再就職者は7月1日現在49人で、平成29年以降、2番目に多いというが、昨年は40人。外郭団体へは今年が15人で昨年が16人、一昨年は18人。減った増えたというより、天下り先の空きポストの数がそれだけと考えた方が実情に近い気がする

▼外郭団体ばかりではない。「民間」に分類されるだろう中にも、昔ながら県と結びつきの強いとされる業者名が散見されるし、県が指導権限を持つ業者や業界団体へ、職務権限を持っていた職員が再就職する例も。退職職員の活用もいいが、何か起こったら後輩職員が厳しく指導できるのかどうか

▼虐待が相次いだ県障害者入所施設「県いなば園」を特別監査した県が多くの不適切行為を認定し、知事が「重く受け止めている」として改善計画の見直しを求めたのに、施設を運営する県厚生事業団の県OB理事長が、評論家のような余裕あるコメントをしているのを見てそう感じた。