任期満了(11月20日)に伴う三重県の伊賀市長選(同月3日告示、10日投開票)が混戦の様相を呈している。これまでに立候補を表明している現職と新人の計5人に加え、元県議会議長の市議が出馬するとの情報もある。平成16年の合併以降としては、過去最多の立候補者となる見通しだ。長年にわたって現職を支えてきた県議と4選を目指す現職の「師弟対決」と展望する向きがある一方、悲願の市長獲得を狙う保守系との戦いという側面も。各陣営の動向に注目が集まる。
市長選への立候補を表明したのは、元日本政策投資銀行職員の浅井健之(32)▽県議の稲森稔尚(40)▽現職の岡本栄(72)▽建設業の萩森正治(43)▽元市議の濱瀨達雄(46)=50音順―の5氏。
このうち、稲森氏は岡本氏を初当選時の市長選から支援してきた。ダイバーシティ(多様性)や定住自立圏など、岡本氏と通ずる施策は多い。稲森氏の進言で岡本氏が実現させた施策もあった。
その稲森氏、今回の市長選では一転して岡本氏の対抗馬に。周辺からは「事前に話し合えなかったのか」と残念がる声もあるが、両氏が出馬を巡って事前に相談し合うことはなかったという。
昨年4月の県議選で自民と新政みえの2人を上回る得票でトップ当選を果たした稲森氏の実力が市長選でも試される。一部が実施した情勢調査では「両氏が競り合う」との結果も出ている。
市長選への出馬を予定するのは、この5人にとどまらない。関係者によると、元県議会議長で市議の田中覚氏(66)が立候補の準備を進めている。日本維新の会は田中氏への公認を決めたという。
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これほど多くの新人が立候補を予定しているのは、岡本市政への反発からだ。新人の多くは「市民の意見を聞く機会に岡本市長が自ら出てくることは、ほどんどなくなった」と指摘する。
対する岡本氏は、コロナ禍で対面の機会が減る中でも市民へのアンケートなどを通じて対話に努めてきたと説明。再選出馬の理由について「どの候補者にも市政を任せられない」と語る。
一方、多くの新人が立候補することで現市政への批判票が分散すれば、岡本氏にとって有利となる可能性もある。市職員労働組合や連合三重は、既に岡本氏への推薦を決めている。
自民系をはじめとする保守層の動向も注目される。保守層の多くは岡本市政からの転換を目指して現職の対抗馬を支援してきたが、結果は惨敗。岡本氏になびく保守層も見られた。
保守層の多くは今回、浅井氏に期待を寄せる。後援会長は地元医薬品メーカーの社長で、支援者らは商工関係を中心に浸透を図る。浅井氏は、つじ立ちなどで知名度の向上に努める。
また、萩森氏は「対話を通じ発展する伊賀市」をテーマに掲げ、知人らの協力を得るなどして浸透を図る方針。濱瀨氏は家業の生花店を営みながら、日々の街頭演説などにいそしむ。
「このままでは、あかんやろ」。岡本氏が初当選時に掲げていたキャッチコピーだ。あれから12年。市民は岡本市政に「あかん」を突きつけるのか。現市政への評価が争点となりそうだ。