真家氏「チャンスとリスク見極めを」 日本企業の対中戦略で 津で本紙政経懇話会

【伊勢新聞政経懇話会で講演する真家教授=津市新町のプラザ洞津で】

伊勢新聞社の政経懇話会が25日、三重県津市新町のプラザ洞津であり、名古屋外国語大外国語学部教授の真家陽一氏が「中国経済の最新動向と日本企業の事業展開」と題して講演した。真家氏は日本企業について、米中対立などを背景に経済安全保障が規制強化される中で、「チャンスとリスクの見極めをすることが重要だ」と指摘した。

真家氏は中国経済の動向について、消費の減少や不動産市場の低迷、債務増加による財政悪化などで景気が悪化していると指摘。

地方政府は巨額の債務を抱えており、2027年には政府債務と合わせてGDP比で150%まで増えると予想。税収の伸びも鈍化しており、政府投資は今後さらに厳しくなるとの見通しを示した。

人口減少社会が急速に進んでいることも指摘。日本と同じように高齢化率が増加しているがスピードが速いとし、日本が超高齢化社会に37年かかったのに対し、30年初頭に約30年ほどで到達するとの見方を示した。

その上で、習近平政権は「新たな質への生産力」を提起していると強調。技術革命や産業の高度化、先進化による生産性の向上を図るなどで諸課題に対応するとしている。

日本企業の事業展開については、経済安全保障や地政学的リスクなどビジネスリスクが複合的に高まっている状況を提示。

特に米中対立の激化を背景に、経済安全保障に関わる規制強化が急速に進展しており、日本企業はリスクマネジメントの観点から規制へのコンプライアンスに細心の注意を払うことが必要だと指摘した。

一方で、「行き過ぎると国際ビジネスを萎縮されることが懸念される」とも述べ、「チャンスとリスクの見極めを適切に行っていくことが中国ビジネスにおいて大切だ」と説いた。

真家氏は青山学院大卒。銀行系シンクタンクなどを経て01年に日本貿易振興会(ジェトロ)入会。海外調査部中国北アジア課長、北京事務所次長などを経て、16年9月から現職。専門は中国のマクロ経済、経済産業政策、日本企業の対中ビジネス戦略。