▼共同通信社の全国電話世論調査で、内閣支持率は24・6%。危険水準といわれる30%には相変わらず遠く及ばないものの、6月下旬の前回調査に比べ2・4ポイント上回った。「内閣支持率の推移」のグラフを目分量で見た限りでは、下方に長期間、へばりついてはいるが細かな上下動は毎月のようにあり、前回比増は珍しくはない。だからといって今後への転換点になるなどの意味もなさそうだ
▼自ら解散風を吹かせて政界からも有権者からも不信感を招いたが、支持率を回復して解散に打って出るというのは岸田文雄首相のここ一年ほどの基本戦略ではあるらしい。先のグラフを改めて見直しても分かるように、岸田政権が誕生した令和3年10月からしばらくは60%を超える支持率で推移した
▼がくんと下落したきっかけは国論を二分した安倍晋三元首相の国葬だといわれる。コロナ対策の混乱、身内の専横、景気対策が重なったこともあるが、丁寧な説明のない決断は、看板だった「聞く力」のイメージも大きくそこねたとされる
▼復調の兆しが見えたのは、翌年4、5、6月である。50%弱まで回復している。5月に開催された先進7カ国首脳会議(広島サミット)の影響で、議長をやり遂げた指導力、G7首脳を原爆資料館の視察に導いた政治力が首相の評価を高めた。岸田政権を振り返って唯一の好機に解散に踏み切らなかったのはなぜか
▼50%以上の回復を考えたわけでもあるまいが、仮にそうなら「政治家としてのセンス」に欠けると、共同通信編集局長が社内報に書いていた。