伊勢新聞

2024年7月21日(日)

▼子どもの泣き声というのはイライラするものに違いない。学生時代などを過ごした東京の電車の中で、子どもを泣かせたままにしている母親に何度険しい目を注いだことか。幼稚園・保育園などで遊ぶ園児らの声がうるさいという苦情が周辺住民からあがったなどの報道をみて、子どもの声は元気の源じゃないかと思うようになったのだから、変われば変わるものだ

▼結婚して子どもができてからだが、世の中はそんなちゃっかり者ばかりではないらしい。一説によると、育児の悩み15選で「夜泣き」が6番目にあげられている。乳幼児期の母親へのアンケートでも「食べる」「眠る」「ぐずり」が悩みのトップスリーだった

▼育児ノイローゼの引き金ともされるが、父親の育児・子育て参加が求められる中で、母親の悩みとばかり特定するわけにもいくまい。生後四カ月の長男に重傷を負わせたとして、四日市市の30歳の会社員が逮捕された

▼乳児はベッドに投げつけられるなどし、急性硬膜下血腫などで全治数カ月という。「泣きやまないことにイライラして、ストレスがたまってやってしまった」という供述は育児ノイローゼの典型的症状だが、育児・子育て分担パパだったか、それとも「子どもを泣かせるな」と母親に迫るような昔ながらの横暴な日本の男性だったか

▼児童への虐待事例は男親の危険性を指摘している。同じ暴力行為でも女親に比べて与えるダメージがはるかに深刻だからだ。イクメンを奨励する一方で、父親の育児ノイローゼ対策も進めなければなるまい。