2024年7月19日(金)

▼再上映されるテレビドラマを見ると、たばこを吸う場面の多さに驚く。刑事役はほとんど休みなく火を付け、灰皿には吸い殻が山盛り。今は昔。新聞記者にとっても、たばこは必需品だった。取材で次の質問が浮かばなかったり、会話が途切れるとおもむろに一服。間を持たせた

▼応接室から灰皿が消えて久しい。が、それで取材に困ったという話は聞かない。県庁に喫煙室があったころ、野呂昭彦知事(当時)がよく通ったという。「喫煙者の肩身が狭くなって、狭い空間で吸っていると親近感が生まれ、本音の話ができてくる」

▼その喫煙室も廃止され、庁舎外に喫煙場所が設定された。喫煙者は「寒空で、背中を丸めて肩を寄せ合うように吸っていると、何とも言えぬ仲間意識が生まれる」。その喫煙場所も撤去された。道路に定番のようだったポイ捨てに吸い殻を見かけることはほとんどなくなった。コンビニの屋外に設置された灰皿の周辺のたばこの臭いに懐かしさを感じたりする。喫煙者は若者が多いようだ

▼喫煙環境が大きく変わり、なお変わりつつある。県喫煙環境を考える会の連絡協議会会長が会合で「行き過ぎた喫煙規制」などとあいさつしたのはいささか時代錯誤のきらいがなくもない。健康への被害が医学的に証明されていく中で飲食店や葉たばこ生産者への影響を訴えても共感を得るのは難しかろう

▼紙巻きたばこの害が指摘され電子たばこができたが、それの規制も検討されつつある。時計の針を元へは戻せまい。喫煙場所の確保もいいが、発想の転換も必要だ。