伊勢新聞

尾鷲、9年ぶり16強狙う 能力引き出し初戦金星 夏の高校野球三重大会

【練習を終えてグラウンドに向かって整列する尾鷲高校の選手ら=尾鷲市古戸野町の同校で】

第106回全国高校野球選手権三重大会は19日からベスト16を決める2回戦が行われる。大会2連覇が懸かっていたシード校のいなべ総合を8―5で退けて1回戦を突破した尾鷲。9年ぶりの16強入りを目指して19日、津球場で開催する2回戦で神戸と対戦する。

選手は3学年合わせて15人。副主将の3年生中川倖太のように高校から野球を始めた選手もいる。今年春、紀南と連合チームを組むも県大会に出場できなかった。4月以降、1年生7選手が硬式野球部に入部したことで単独チームで夏の初戦に臨むことができた。

一回表、チーム一の俊足の3年生、1番庄司耀成が内野安打で出塁して初回に2点を先制した。その後は3時間に及ぶ前年度優勝校とのシーソーゲームを勝ちきった。

守っては、緩急をつけて打たせて取る3年生右腕川端惺七を中心に13安打を浴びながら5失点で粘った。4―4の同点で迎えた九回2死満塁の好機では3年生の山城璃毅之主将が高校入学後初の本塁打となる決勝満塁本塁打を放って勝利を引き寄せた。

選手15人中13人が地元の尾鷲中出身。同中軟式野球部は2021年5月の少年軟式野球県大会準優勝の実績がある。山城、川端、庄司耀らは少年野球チーム「尾鷲野球少年団」時代も県大会で準優勝している。

「子どもたちの能力は高い。その能力を引き出せば勝つチャンスもあると思った」と話す野球部の伊藤大希監督。1年生を迎えると、野手を中心にコンバートを敢行。持ち前の打力を得点につなげるため、犠打の練習にも取り組んだ。格上の大学生チームが相手の練習試合でも接戦に持ち込めるようになり、手応えを深めて夏の県大会に臨んだ。

いなべ総合戦の反響は予想以上。初回の先制適時二塁打を放った3年生の三鬼進慈郎は「自分たちは勝てると思っていたが試合が終わったら周りに驚かれて、そこでやっとすごいことをしたんだと実感が湧いた」。決勝弾の山城は「クラスメートとか学校の人だけでなく街の人からも声をかけられることが増えた」とはにかむ。

ただ慢心はない。庄司耀成は2回戦で対戦する神戸について「1回戦を逆転勝ちした粘り強いチーム。気を抜かずにいきたい」。3年生で唯一、1回戦でスタメンから漏れた庄司陸人は同学年の仲間から「絶対勝つからベンチで待っとれ」と励まされた。有言実行ののチームメートに感謝して「自分も打ってチームに貢献したい」と意気込む。