伊勢新聞

医療MaaS新車両を導入 遠隔診療や患者移送 三重・鳥羽市

【鳥羽市が新たに導入した医療MaaS車両と、実証事業に取り組む医療関係者ら=鳥羽市大明東町で】

【鳥羽】へき地の医療提供体制を強化するため、昨年12月から医療MaaS(マース)車両を活用した実証事業に取り組む三重県の鳥羽市はこのほど、オンライン診療や患者の移送などを行う市独自の新たな車両を導入し、お披露目した。19日から運用を始める予定。

実証事業では、石鏡町と浦村町を合わせた鏡浦地区を対象に、医療機器などを積んだ同車両に看護師が乗り込んで患者の自宅近くに出向き、オンラインで診療所の医師とつないで遠隔で診療するほか、必要に応じて患者を診療所に移送するなど、先月まで73回の運行があったという。

市によると、鏡浦地区には浦村町本浦地区にある市立鏡浦診療所のほか、石鏡町と浦村町今浦地区にそれぞれ分室を設置しているが日替わりで開設し、午前と午後で医師が移動するため、診療時間が短くなるという課題があった。

そこで医師が効率的に広範囲をカバーし、住民の診療機会を増やす取り組みとして、ソフトバンクやトヨタ自動車などの共同出資会社「モネ・テクノロジーズ」などと連携して実証事業を開始。鏡浦地区で診療を行う、坂手診療所の菅原茂医師と神島診療所の小泉圭吾医師がオンライン診療を担当している。

今回は、市が独自の車両を約1650万円で購入。これまでの実証調査を踏まえて配線や手すりの位置などを工夫し、より使いやすくした。

車両の図案はデザイナーの飯田団紅さんが担当。鳥羽の日和山からの景色と言われている歌川広重の浮世絵を参考に、鳥羽の景色の中を泳ぎ回る医師を描き、高齢の利用者らも親しみやすい和風のデザインにした。

菅原医師は「この車両がへき地の医療に大きな役割を果たしていくと期待している」、小泉医師は「まだ皆さんに周知できていないので、こういう便利なものがあると理解していただき、住み慣れた場所で、できるだけ長く生活できる助けになれば」と話した。

【オンライン診療を行う医療MaaS新車両の車内。必要に応じて診療所への患者移送にも使用する=鳥羽市大明東町で】