伊勢新聞

2024年7月14日(日)

▼新任知事と職員との対立は平成12年に長野県知事に当選した田中康夫氏に対する名刺折り曲げ事件が有名だ。田中知事が差し出した名刺に異を唱え、企業庁長が折り曲げた。人気作家の知事転進でマスコミは大きく取り上げたが、その後は特に大きな対立はなかった

▼兵庫県では就任3年目の斎藤元彦知事らのパワハラを告発する文書を配布した幹部が死亡し、側近の副知事が知事への苦言を吐露して辞意を表明。県職員組合が進退を迫る。パワハラについては、内部調査が事実無根としたが、県議会は百条委員会を設置している。収拾のつかない大火事に見える

▼副知事は知事のコミュニケーション不足を挙げていた。少なくとも叱責(しっせき)が苛烈を極めたということらしい。こればかりは、当事者でなければ深刻さは分からない。県で思い出すのは北川正恭知事(当時)だろう

▼県職員の大方が支援した元副知事を敗って当選した。敵陣に乗り込む気持ちだったか、前県政で優遇された口数の少ない職員は“敵”に見えたのかも知れない。「守旧派」として徹底的に攻撃した。恣意(しい)的な人事に片りんが見える。部長から研修所長、県民局長、部長へと、1年ごとに異動させたりした

▼“反抗”のそぶりが見えると思い込めば容赦なく切り捨てた。一方、お気に入りは異例の昇進もした。うつやノイローゼになった職員も少なくないといわれる。「オレもそうだった。オレも改める。みんなもそうしてくれ、と言えば職員はついて行ったのに」と県OB

▼「県入りができないじゃないか」とも。