伊勢新聞

2024年7月12日(金)

▼「夏の交通安全県民運動」(11―20日)が始まり、主要道路に多数のパトカーをみかける。一昨年は昭和29年の統計開始以来最少だった一昨年の交通事故死者数だが、昨年は5年ぶりの増加に転じた。今年は前年比で11件減。増加する後半に備え、何としても押さえ込もうという取り締まり当局の意地を感じる

▼交通事故死遺族の大草さつきさん=尾鷲市=の講演会が伊勢市の県立明野高校で開かれ、全校生徒約470人を前に、遺族の悲しみや命の大切さを語った。大草さんは15年前、吹奏楽部の練習を終えて自転車で帰宅する高校2年生の息子を車にはねられて失った

▼「今日は明日へ、ずっと未来へとつながると思っていたが、突然絶望という暗闇に落とされた」と語り、命を絶ちたいと考えたが「伝えていくことが残された者の役割」と思うようになったという

▼やはり15年前、高2の息子を亡くした鷲見三重子さん=東員町=は亀山中学校で、苦しみの日々から「息子は幸せの種をまき終えたんだ」と自分を納得させ「加害者を憎む人生よりも、助けてくれる人や支えてくれる人がいる限り、これからも生きて行ける」と語った

▼遺族感情はさまざまで、県警察学校で交通捜査を担う警察官らに講演した波多野暁生さん=東京都=は4年前、赤信号を無視した車にはねられた11歳を思い、過失運転致死傷容疑から危険運転致死傷罪への起訴に変えさせた体験を語り「悪質運転には最大限の罰を」と訴えた

▼加害・被害者どちらにもならぬ気持ちを心がけたい。