「毎日を大切に生きて」 交通事故遺族、明野高生に思い語る 三重・伊勢

【生徒たちに、命の大切さや遺族の悲しみを語る大草さん=伊勢市の明野高校で】

【伊勢】15年前、交通事故で、当時17歳だった息子を亡くした三重県尾鷲市の大草さつきさん(66)の講演会が九日、伊勢市の県立明野高校で開かれた。全校生徒約470人を前に、交通事故被害者遺族の悲しみや命の大切さを語った。

大草さんの息子侑真さんは、高校2年生だった平成21年1月、吹奏楽部の練習を終えて自転車で帰宅する途中、車にはねられ、意識不明の重体となり、17日後に亡くなった。

大草さんは「今日は明日へ、ずっと未来へとつながると思っていたが、突然絶望という暗闇に落とされた」と語り、事故当日の状況や、侑真さんが亡くなるまで意識が回復することを願いながら過ごした日々を振り返った。亡くなった後、自分を責め、自らの命を絶ちたいと考えたこともあったが「伝えていくことが残された者の役割」と思うようになったという。

事故の裁判で感じた悔しさや怒り、喪失感の中、周囲から「頑張って」と声をかけられることの苦しさなども率直に語り、「侑真は生きたかった。生きていることは奇跡。当たり前じゃない。毎日を大切に生きてください」と呼びかけた。

参加した生産科学科3年の西川楓夏さん(17)は「交通ルールを守っていても、事故に巻き込まれることがある。悲しむ遺族がいる。自分の命もほかの人の命も大切にしたい」と話していた。

講演会は、県警とみえ犯罪被害者総合支援センターが、各地の学校などで開いている。