津市稲葉町の障害者入所施設「県いなば園」で利用者への虐待が相次いだ問題で、県は8日、施設を運営する県の外郭団体「県厚生事業団」に対し、社会福祉法などに基づく特別監査の結果を通知した。これまでに認定していた3件の虐待に加え、13件の不適切な行為があったと認定。入所者から徴収した現金を紛失していたことも明らかになった。
県によると、不適切と認定した13件は、入所者を呼び捨てにした▽入所者が乗った車椅子を蹴った▽入所者に「ルールを守れなかったら、お母さんに会えないよ」と声をかけた―などの行為。少なくとも18人の職員が関わったという。
入所者から布団の洗濯代として徴収した現金19万4370円が昨年9月、施設内の金庫から無くなっていたことも判明。事業団は紛失した現金を負担し、被害届を提出した。紛失の原因は「全く分からない」と説明している。
この紛失を含め、県は組織や運営で7項目の課題があると認定した。運営面では「利用者の尊厳が損なわれた」とし、虐待の疑いがあると認識した職員が通報を怠ったことなども指摘。9月9日までに改善計画を提出するよう求めた。
この日、事業団の井戸畑真之理事長が県庁を訪れ、子ども・福祉部の枡屋典子部長から監査結果の報告書を受け取った。井戸畑理事長は「皆さまに改めておわびする。報告書の内容を精査し、再発防止に取り組む」と述べた。
報道陣の取材に応じた井戸畑理事長は不適切な行為の背景について「忙しい中で職員が余裕を無くしていたことがあると思う」と説明。「虐待防止の取り組みに加え、働き方や職場風土も改善して安全で安心な環境をつくる」と語った。
いなば園では令和3年9月、職員が児童を厳しい言葉で指導する心理的虐待が起きた。再発防止に取り組むさなか、昨年には入所者2人への身体的虐待が発生。県は昨年12月から特別監査を実施し、職員への聞き取りを進めていた。