伊勢新聞

2024年7月8日(月)

▼7月は古名が文月。宮廷の七夕行事にちなみ、詩歌をつくる風習からこの名が生まれたというのが一般的だが、七夕のささ飾りにつるす短冊には願い事を書くようになったのはいつの頃か

▼苦しい時の神頼み、困った時の神頼みともいう。日頃神仏などは信じていないのに困難に直面すると「神様助けて」と神仏に救いを求めて祈る。日本人の身勝手さと言われるが、初詣にしろ流れ星にしろ先祖参りにしろ、それが日本人の信仰のスタイルかもしれない

▼今年も全国、県内各地で織り姫・彦星に願い事をした善男善女は多かったに違いない。願い事は、家族の健康・円満、世界平和、幸せなどが定番で、初詣などと変わりはないが、津市の百貨店のアーケードで飾られるのは保育園・幼稚園児の作成だけにおもしろい

▼「スポーツが上手になれますように」「友達とケンカをしませんように」。勉強や家族関係も多かったが、中に「ごはんをたくさん食べられますように」というのがあった。どうしてこんな願いも持つに至ったか、しばらく考えさせられた

▼友達と比べて自分は小さいというコンプレックスでもあったか。「ごはんをたくさん食べなければ大きくなれませんよ」と日頃母親から口を酸っぱく言われ、危機感を感じてしまったか。給食を完食しなければいじめの対象になると教え込まれたわけではあるまい

▼何となくほほえましく口元が緩んだが、世界の飢えた幼児の悲惨な姿を毎日のようにテレビで見る。少子化だが、日本の子どもはまずまず幸せだとも思った。